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文化政策・私の提言


文化政策・私の提言 vol.10


文化審議会の「中間まとめ」に対する意見

鈴木滉二郎(元全国公立文化施設協会常務理事)

論点1 文化拠点の整備

○意見の要旨
公立文化会館を市民文化形成あるいは芸術創造の拠点とするためには、 主体の転換(行政の管理・運営から市民、NPO、芸術家、創造団体主体の運営へ)が求められる。

○意 見
 公立文化会館の多くが市民文化形成、芸術創造の拠点となりえていない主要な原因は、 行政による施設管理や事業の実施が そうした目的を実現する上で明らかに限界があることによるものと考えます。
 会館運営を公務として行う場合、一般的に職員は、主観的には極力公平を旨として、 現実には芸術性の評価などとは無縁の運営に終始せざるを得ない立場にあります。 たまたま文化、芸術に理解ある職員が事業を担当したとしても、通例、異動年限があり、 長期在職がかなわない状況にあります。
 多くの自治体では柔軟な管理・運営を行うため 財団や3セク組織に運営管理を委託していますが、このような組織自体が行政のダミーに過ぎなかったり、 そのトップを文化に理解のない自治体OBが占める場合など、 行政が直接運営するよりさらに硬直化する場合すらみられます。
 外部から専門家を迎え入れ、適切な運営を行っている公共劇場は、 下記の例のように、従来のハコモノと揶揄される施設と異なり、 文化形成・芸術創造の拠点としての役割を果たしています。

○大阪毎日ホールから迎えられた山根淑子館長のもとで「兵庫県立ピッコロシアター」は 俳優養成学校、舞台技術者養成学校をつくり、その修了者の受け皿として「ピッコロ劇団」をもちました。 山根館長の要請で清水邦夫、秋浜悟史、別役実、藤原新平の各氏らが劇団・館運営に協力し、 大きく育った「ピッコロ劇団」が6年前の阪神大震災の際、 避難所で不安におののきながら暮らす罹災者をどれだけ力づけたか分かりません。

○SPAC(静岡県舞台芸術センター)の芸術総監督を務める鈴木忠志氏は 静岡芸術劇場を舞台として独自の演劇作品を創り、 1999年には静岡芸術劇場を中心に第二回シアター・オリンピックを成功させました。 ロバート・ウィルソン、リュビーモフ、オマール・ポラスら 現代演劇を代表する世界レベルの演劇作品に拮抗して、SPACの創造作品が公演されたこのイベントは、 静岡芸術劇場がわが国を代表する公共劇場であることを世界の人々に印象づけました。 SPACは現在付属演劇研修所をもち、俳優養成や青少年育成プログラムも展開しています。

○劇団あしぶえの創造活動の拠点となっている島根県八雲村の「しいの実シアター」では、 昨年11月劇団代表の園山土筆さんを芸術監督として第一回八雲国際演劇祭が開催されました。 あしぶえは、30数年に渡り島根県で演劇活動を続け、数年前から、 アメリカやカナダの演劇祭で高い評価を得ている劇団ですが、 95年に開設した「しいの実シアター」のレジデントとなり、 当地で世界的なアマチュア演劇祭が実現したのです。


論点2 文化政策としての国語の取り扱いについて

○ 意見の要旨
文化政策の文脈の中で国語を取り扱う場合は慎重さが求められる。


○ 意見
 第二章2(4)「国語の重視」の中で述べられている内容について格別異論はありませんが、 これは教育政策として取り組まれるべきことで、 下記に述べるように文化政策の文脈で取り扱われるべきものではないと考えます。
 1997年3月札幌地裁は「二風谷ダム事件判決」において、 アイヌ民族は「憲法13条によりアイヌ民族固有の文化を、 また同年5月アイヌ文化振興法が成立するのに先立ち、 95年3月内閣官房長官の私的諮問機関「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」は 96年4月に提出した報告者のなかで、
・アイヌの人々の先住性
・民族としての独自性
・文様や口誦伝承などにアイヌ文化の大きな特色がありアイヌ語は独自の文化であること
・近代化の中でアイヌ文化の破壊が進展したこと
などを明らかにしました。
 一方、中間のまとめ第一章5.「グローバル化と文化」で述べられているように 「今後世界が共存していくためには、各国、各民族が互いの文化を尊重し、多様な文化を認め合うとともに、 文化交流を通じて、国境や言語、民族を超えて人々の心を結びつけることによって、 世界平和の礎を築いていくことが極めて重要です。」と述べられています。 このように、これからの国際化した社会では、 国内でも多様な民族が多様な言語のもとで 共存していく多文化社会が当たり前の姿になっていくと思われます。

 文化の文脈のなかで言語を取り上げる場合は、 それが文化の枢要な部分であるだけ慎重な対応が求められます。
 また、近代化の中で破壊が進展したのは、 アイヌ文化や琉球文化に限らず広範に認められることですが、文化の核を成すともいえる言語に関して、 わが国ほど無神経な対応をしてきた国も珍しいのではないでしょうか。
 一橋大学大学院言語社会学研究科のイ・オンスク助教授は、 その著「国語という思想」のなかで、「近代日本においては、 『日本語』という地盤が確固として存在した上に『国語』という建築物が立てられたのではない。 むしろ、『国語』というはでやかな尖塔が立てられた後に、 土台となる『日本語』の同一性を大急ぎでこしらえたという方が真相に近いだろう。」と述べておられますが、 ここには近代化のなかで言語をどう扱っきたかが示されています。 文化を考える上で今「国語」の成り立ちに無自覚でいることはできません。
 日本国民に等しく文化権が保障されているというのであれば、 憲法上の権利であることが確認されたアイヌの人々の文化享有権や、 アイヌ文化振興法という先行する個別法に矛盾することのない文化芸術振興基本法の解釈や 基本方針が打ち立てられるべきものと考えます。
 如上の理由により、「国語の重視」の段落は、 文化の基本方針の全体の文脈の中で矛盾する面があり、削除されますよう意見具申いたします。

(2002/02/18)


鈴木 滉二郎(すずき・こうじろう)
1968年東京都庁に入り「文化の時代」といわれた80年代初頭、
生活文化局企画主査として文化行政の体系づくりに従事。
企画審議室計画担当課長、報道課長などを経て、
97〜99年東京文化会館副館長、この間法政大学講師など。
文化政策研究、(財)演劇人会議評議員(論文「21世紀の公共劇場」演劇人5号など)


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第3回 小林真理(静岡文化芸術大学) 第4回 渡辺通弘(昭和音楽大学)
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Last update: 2002/11/23
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